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梟と守人 Ⅰ2012-11-17(Sat)

梟1


今しがた火の入ったストーブが、冷え切った部屋の空気をキシキシと溶かし始めた。
使い込まれた3つの湯呑に注がれた生姜茶の香りが温んだ空気に色をつけ、
壁一面に置かれた木彫りの梟と羆、その何百という瞳がゆらりと光を帯びる。
「春になると、一面に カタクリの花がね・・・」
語り部は決まってはいない。
今日もまた、誰からともなく思い思いに話し始める。


僕は10月から、半年の期限付きで札幌に来ていた。
住み慣れた宮崎に家族を残してという条件は正直堪えたけれども、渓流は禁漁時期、
北海道にはソレが無い事実に、少しだけ希望を持って踏み出せたのは釣り師の性だろう。
しかしこのせめてもの享受も、マイナス10℃に迫る渓流の気温と、雪上に残された羆の足跡に、
11月半ばには砕かれる事になる。
同僚に誘われて行った海アメやカジカ釣りも十分に僕を楽しませてくれた。
10年程前、信州で渓流を始めるまでは海一辺倒だった事もあり、古びてはいたがタックルにも困らなかった。
それでも暫くすると、やはりどうしようもなく足は山へ向かう。
週一の休みはロッドをカメラに持ち替え、借り物のカンジキを履いて、
冬山は危ないという周囲の言葉を露天温泉巡りという名目で濁しながら、
日がな一日知らぬ場所の徘徊を始めるようになった。
その夫婦に出会ったのも、そんな時期だ。

すっぽりと雪に取り込まれたその家は、札幌から車で一時間程、山間を縫う車道から少しだけ外れた所にある。
この時期は深い雪で流れもおぼろげだが、敷地から斜面を下った先には清流があり、
新緑の季節になるとニジマスや野生の蝦夷岩魚が遊び、家人の貴重な蛋白源になるのだそうだ。
囲む山にはそれぞれを縄張りとした3頭の羆がいて、今まだここに自然のあるべき姿を見せてくれるのだと、
真っ白な庭を歩きながら主が話してくれた。
ただ、深山の隠れ家を絵に描いたようなこの風景も、周囲の木々に目を凝らすといささか事情が違ってくる。

この家は、たくさんの梟に囲まれているのだ。


梟2



| 徒然


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